ドラマーの海老原諒さんとギタリスト外園一馬さんによるセッション企画「AOR向上委員会」に行ってきました。
この記事では、当日の様子をお伝えするとともに、セットリストについて、簡単な解説も入れてみたいと思います。
ミュージシャン。鍵盤担当しています。頻繁にライブを観に行きます。
音楽に絡めた旅をするのが好き。国内は、まもなく全県制覇。
旅行業界在籍経験あり、ホテルのことは詳しいです。
横浜在住。横浜のおすすめスポットもリリースしていきます。
AOR向上委員会とは?
海老原さんも外園さんも、有能なセッションプレーヤーで、数々のミュージシャンのサポート活動をしていますが、ある現場で共演した際に、AORの話で意気投合し、それがこのセッション企画のきっかけになったようです。
最初は、AORを代表するミュージシャン、Bill LaBounty の話で盛り上がったようです。
当日のセットリストにも、Bill LaBountyの名曲が入っています。
その後、「AOR Night」というイベントタイトルで、三軒茶屋のライブハウス「グレープフルーツムーン」を中心に、ベース、キーボードも含めたセッションライブを行っていました。
パンデミックで活動が滞ったのですが、今回、アコギとパーカッションというシンプルな編成で活動を再開したという経緯があります。
「向上委員会」というネーミングは、AORリアルタイム世代ではない彼ら自身が、AORを勉強していこうという想いが込められています。
今回は、名古屋、大阪、そして今回の神奈川(武蔵溝の口のカフェ&バー「neonera」)の3か所を周るツアーの開催となったわけです。
そもそもAORとは、どういう音楽?
外園さんのMCにもありましたが、「Adult Oriented Rock」の略だと言われています。
直訳すると「大人志向のロック」となります。
同様のAORセッション企画では、DIMENSIONの増崎孝司さんやヴォーカリストの三谷泰弘さんが中心となり、目黒Blues Alley Japanで不定期に開催される「本気でAORナイト」が有名ですが、そちらでは、「ブラックミュージックをルーツに持つ、白人を中心としたアーティスト達の、1977~1983年頃の楽曲(三谷さんMCより)」といった定義がされていました。
音楽のカテゴライズは、リスナーの感じ方や、時代の変遷にもより、なかなか一概には言えない部分がありますよね。
このセッション「AOR向上委員会」では、1976年にBoz Scaggsがリリースした「Silk Degrees」という名盤を「AOR元年」ととらえ、そこから約10年程度の期間の「大人のためのRock」という表現で説明されていました。
その中でも、外園さんは60~70年代の流れを汲んだ「AOR初期」の楽曲が、海老原さんはその後、1982年を中心に、より緻密なサウンドの楽曲が好みのようです。
いずれにせよ、都会的なイメージや(曲によっては)メロウな曲調、緻密なアレンジと、高度な演奏技術で、日本の所謂「シティポップ」やその後の音楽にも多大な影響を与えたジャンルと言えるかと思います。
カフェ&バー「neonera」
東急田園都市線/JR南武線「武蔵溝の口」から徒歩約7分のところです。
今回、初めて訪問したのですが、お洒落なレストランやカフェが入った建物の2階になります。
セットリスト
ファーストセット
①Never Turnin’ Back / Bruce Hibbard
米・オクラホマ出身ののミュージシャン Bruce Hibbardの2作目の1曲目に収録されている名曲です。
ハネ系のリズムで、今回の編成との相性も、とても良かったです。
このアルバムは、この曲ではなく、明るくメロウで聴きやすい楽曲を多く含んでいて、アルバムジャケットのようなドライブミュージックにも適していますね。
AOR初心者の方にも、是非お勧めしたいのですが、サブスクになく、CDも、現在は在庫切れになっていて、もしかしたら廃盤かもしれませんが、再発が待たれます。
②On And On / Stephen Bishop
1976年の2作目「Careless」からのシングルカットで、全米11位を記録した楽曲です。
まだ,70年代のサウンドが色濃く残っているこの曲は、やはり、外園さんの選曲のようです。
これも、メロウな曲で、アコースティックには、よく合います。
Stephen Bishopは、その楽曲が、様々なアーティストにカバーされていることからも、コンポーザーとしての実力が伺えます。
③All Right / Christopher Cross
人気絶頂期であった頃のChristopher Crossの1984年のアルバム「Another Page」からのシングルカット曲で、彼の代表曲の一つです。
原曲では、コーラスにMichael McDonald、リードギターにSteve Lukatherがクレジットされていて、豪華なサポート陣になっています。
非常にキーが高いため、外園さんですら、キーを下げて歌っていました。
④Just Once / Quincy Jones (Vo:James Ingram)
プロデューサー・コンポーザーとして、POPS界に多大な影響をもたらしたQuincy Jonesが、11月3日に亡くなりました。
以来、洋楽のかかるミュージックバー等で、彼の曲を耳にする機会も多いと思います。
この曲は、1981年の「The Dude」というソロ名義のアルバムに収録された曲で、そのメインヴォーカルがJames Ingramになっています。
こちらも、原曲はSteve Lukather、David Foster、John Robinsonといった豪華サポートや、ストリングスも含めて、壮大な楽曲に仕上がっているのですが、今回のこのシンプルな編成との相性も素晴らしかったです。
やはり、楽曲力と演奏力でしょうか。
⑤Come On Home / Pages
Pagesは、Richard Page(Vo)とSteve George(Kb)から成るユニットで、こちらは、2枚目のアルバムからの選曲になります。
今回のライブの編成で、この曲が演奏されるのは少し驚きだったのですが、この曲は、メインボーカルを海老原さんが取り、後半に出てくるサックスの印象的なフレーズ(Youtubeの2:29付近から)を、外園さんがギターを弾きながら口ずさむという技が飛び出しました(笑)
ちなみに、豆知識としてご紹介しておきたいのは、原曲では、Jeff Porcaroがドラムスを担当していることと、Pagesのこの2人は、その後、「Mr.Mister」に発展的解消を遂げ、別の方向性(所謂80年代洋楽)で、2曲の全米No1ソングを残しています。
この曲もサブスクにはなかったようですが、CDではまだ購入できそうです。
⑥Livin’ It Up / Bill LaBounty
Bill LaBountyの代表曲です。
冒頭でもご紹介した通り、この曲は、海老原さんと外園さんが意気投合するきっかけになった曲で、彼らのセッションでの定番曲になっています。(というよりは、「AORの定番曲」)
彼らのオハコで、ファーストのラストに相応しい選曲ですね。
セカンドセット
セカンドは、ゲストヴォーカルに、藤原美穂さんを加えてのステージになりました。
⑦Ride Like The Wind / Christpher Cross
今回のライブは、AORの入門的な、定番曲の多いセトリとなりましたが、中でも抜群の認知度の曲ではないかと思います。
Christopher Crossは、高くて透明感のある声が印象にあると思いますが、ギタリストとしての評価もとても高く、この原曲(スタジオ盤)のリードギターは自ら弾いていますし、ライブでも、曲によっては自らギターソロを取ります。
1979年のアルバム「Christopher Cross」より。
⑧Baby Come Back / Player
1979年リリースのこの曲は、全米No1の大ヒット曲になりました。
美しいコーラスワークが、この曲の最大の魅力ですね。
「Ride Like Wind」もそうですが、2部では藤原美穂さんが加わることで、海老原さんも含め、より分厚いコーラスや、攻めたアレンジの曲の曲が増えました。
また、コーラスだけではなく、出だしの印象的なベースラインを、海老原さんがヴォーカルで表現し、リスナーを楽しませていました。
⑨Cool Night / Paul Davis
Paul Davisは、70年代から80年代の初頭にかけて活動したシンガーです。
個人的には、とても癒しを感じさせるサウンドとメロウな曲調と声質が、群を抜いていると思っていて、AORを語る上で、欠かせない存在だと考えています。
このユニットでPaul Davisの曲を取り上げたのは初めてとのことですが、外園さんの声質に合うという藤原さんのリクエストだったそうです。
とてもセンスのあるリクエストですね!
1981年の名盤「Cool Night」からアルバムタイトル曲で、当時のチャートにも登場しました。
⑩Look What You’ve Done To Me / Boz Scaggs
ピアノのイメージが強いこの曲を、この編成で取り上げるのは、ゲストヴォーカルの藤原さんも驚いたようです。
特に出だしの、間の多い静かな部分は、プロの方でも、音程を取るのが難しいようです。
でも、実際に始まってみると、とても自然に聴こえました。
ギター1本ではさすがに難しかったかもしれませんが、ここは海老原のパーカッションが曲に抑揚を与えていました。
カホンは、ペダルのキックで低音域を出し、バックビートは左手で、そしてフリーになった右手でシェーカーや金物系を効果的に使っての演奏でした。
⑪O.C.O.E. / Pages
こちらも、先程ご紹介したPagesの2枚目のアルバムからの選曲です。
(サブスクが無かったので、Youtubeになってしまいます)
セカンドは、攻めた選曲が多いと言いましたが、こちらが最もそれに当てはまるかと思います。
これは、藤原さんの提案によるものですが、このキメの多い曲を、ベースレースでやるのか??と最初は思ってしまいました。貴重な体験となりました。
アンコール
⑫How Sweet It Is / James Taylor
このアンコールは、全く予想外の選曲でした。
James Taylorといえば、アコギを手にした、日本流にいうと、「シンガーソングライター」というイメージで、AORとの接点がないようなイメージは、正直あります。
ただ、一時期、AORに寄った作品をリリースしているのは事実で、先程ご紹介した、増崎孝司さんの「本気でAOR Night」でも過去に取り上げられています。
また、この曲(How Sweet It Is)のSaxがDavid Sambornで、さらには、原曲が、Marvin Gayeということも、また興味深く感じます。
結果として、最もAORっぽくない曲で終了していますが、その辺りもふまえ、実際の映像でご覧頂ければと思います。(撮影許可が有った映像です)
物販
先程の写真や映像にも少し出てきますが、今回、物販を積極的にやっていました。
実は、19:30スタートだったのですが、19:00過ぎにはお二人が既に出てきて、物販を始め、ファーストとセカンドの間とアンコール終了後も、自ら物販をしていました。
アーティスト自ら出納・・・こんなのは初めて観ます!(笑)
中でもオリジナルのTシャツは、2サイズ/3色(レギュラー/ロンT)の12種類あったのですが、かなりの勢いで売れていました。
また、雑誌「AOR AGE」にお二人へのインタビューが6ページにわたり掲載されていて、それも販売されていました。
個人的には、本は既に持っているので、ロンTにサインを頂き、軽くおしゃべりもさせて頂きました。
こういう距離感も、嬉しいですよね。
最後に
AORファンなので、つい長い記事になってしまいました。
こうしたライブで、知らなかった曲と出会い、まさに「向上」できるのは、とても良い機会ですよね。
若いお二人から、AORに対する深いリスペクトと愛情を感じました。
当ブログでは、過去にも、AORに関する記事をリリースしてきました。
こちらの記事も、何かのきっかけになれば、嬉しいです。
【ライブ現地レポート】「本気で AOR Night」at目黒ブルースアレイジャパン
Jeff Porcaro セッションワークでのAOR名演20選
当サイトは、主にライブレポートや、お出かけに関する記事を、ゆるやかに綴っていくブログなのですが、今後も、不定期にはなりますが、AOR関連記事をリリースしていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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